夜と霧 新版

エッセイ風に書かれたノンフィクションですね。
YAよりもやや大人向けの本ですが、読解力が追いつくなら、いくつであってもぜひ読んでほしい。
ユダヤ人の強制収容所にいた心理学者の作品です。

昨年のちょうど今ごろレジーン・ミラー物語を紹介しました。
レジーン・ミラー物語は収容所に入らずにすんだ少女のノンフィクションですが
夜と霧は、収容所に入って生き延びた男性のノンフィクションです。
彼は心理学者でもあったので
収容所にいる間もときどき心理学者の観点から自分や周りの人の内面を分析し
そのことによって生き延びる原因の一端をつくりだしたといえるでしょう。

彼は序文で自分や周りの人の名前を出して本を書くことについて
「わたし自身を売り渡したのだ」と書いていますが
そのことにより、これは実際の体験であり、けっして架空のものではないのだという実感を私たちに与えてくれます。


この本では収容所の中はどうなっていたか、生活はどうだったか
などについてはそれほどくわしく記述されていません。
心理学者である彼は、被収容者の心理を段階に分けて説明しており
その中に生活や役割などが入り込んでくるかたちです。

収容から収容所生活、そして解放までの一連の生活のなかでどのように感じたか
周囲の人たちはどのようだったか
飾らず静かに力強く彼は語ります。

人はひとりひとり違うこと
どのような環境であっても尊厳をもって生きる人がいること
醜さやみじめさのの中にあっても光るものがあることを
繰り返し告げています。

彼には強さがありました。そして運もありました。
だから生き残ることができ、解放されました。
彼は自分のしたことやしなかったことをすべて素直に語っています。
隠したかったこともあるでしょうが、彼が「自分を売り渡し」てくれたことによって
わたしたちは当時の彼の心に触れることができます。

アンネの日記がみなに読み継がれているように
この本もまた読み継がれていくべき作品だと思います。




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ざっそう

comment iconコメント ( -2 )

売り渡す

この本の存在を知りませんでした。是非読んでみます。
「自分を売り渡す」という表現、分かる気がしました。
こんな方がいるからこそ、真実が後世まで伝わっていく。思えば、あらゆる人がユダヤ人というだけで収容され虐殺されていった時代。心理学者の目線から、当時の人間がどのように見えていたのか。また、彼自身がどう生きたのか。強烈な関心を持ちました。
ざっそう(書き込めなかったときのw)とあわせて、図書館で探してみます。
またも貴重な本との架け橋、ありがとうございます。

名前: 美鳥 [Edit] 2009-04-16 14:50

美鳥さん
ワタシもこの本はつい最近知ったばかりです。
みすず書房さんは、派手にはやりものを出版する、というところではないし、文庫や新書もたしか出してないはず。
ということで、たぶんハードカバーがじっくりと読まれているのではないかと思います。
ワタシは今、おなじ著者の「それでも人生にYesという」という本を読んでいるところです。
解放されてそれほど年月がたっていない時の講演録でして
読み終わったら今度は日常のブログの方でご紹介するかもしれません。
とても味わい深く、心にしみる文章と内容です。

名前: しろいまちこ [Edit] 2009-04-16 19:24

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