若草物語のオルコットのダークネスサイド小説!
出版当時は話題になりましたよねー。


内容(「BOOK」データベースより)
18歳のロザモンド・ヴィヴィアンはイギリスの小さな島で、愛情のない祖父と二人きりの孤独な生活を送っていた。ある日、祖父のもとを大金持ちのフィリップ・テンペストが訪れる。ロザモンドは自分の倍近い年の、どこか陰のあるテンペストと恋に落ち、二人は結婚してフランスへと旅立つ。しかしやがてロザモンドは、その結婚が罠であり、テンペストの恐るべき秘密に気づき始める―。

著者:ルイザ・メイ・オルコット
出版社:徳間書店
初版:1995年10月31日

もう20年近く前になっちゃうのか…。
オルコット作品は『ルイーザ・メイ・オルコットの日記――もうひとつの若草物語――』『追記』が過去記事にあります。
あれ?これだけ?他の作品も紹介したつもりだったけど、してなかったのね。今度オルコット祭りしようかしらん…。

オルコットの伝記を読んで、その話をしていた時だったかしら。
アレがすごい、みたいな話をしたらご存知なく。
自分の記憶も大筋だったので読みかえそうと思ったら…
いやー
濃かったですわー。

ストーリーのためのストーリー、的な部分のあるちょっと唐突な始まりかたは否めないのですが
もうこってこての高いテンションでグングン話がすすみます。
これは書いてるオルコットさん、さぞや楽しかったことでしょう。

一方、生前は出版されなかったそうでして、それも納得(理由は後述します)。

この物語を読んでのワタシの印象は
「妻の存在を暴露されずに結ばれてしまった『ジェーン・エア』」
であり
「最初にリギアを捕まえることに成功した『クォ・ヴァディス』」
でした。
もっともこれは主人公のロザモンドがかなり向こう見ずで快楽主義者の傾向が強いことも関係していそうですが。

「法律や慣習なんて知らないし、世間の道徳は軽蔑してます。恥や恐れなんてちっとも怖くない」
「短くても楽しい生活がほしい。快楽を得るためには、必要なら喜んで代価を支払うわ」

などと冒頭で勇ましく語っております彼女。強さと世間知らずがミックスされた若い女性なんですね。
勢いのいいことを言っても、やはり現実として結婚できないまま情婦ではいられない、ということで
事実が発覚した後はひたすら逃避行を繰り返します。
逃げて見つかり、また逃げ出す…のくり返し。
かなり最後のほうまで愛情は残っているのに。
そして相手の男性・テンペストは離婚してロザモンドと再婚できるようにするからそれまで待っていろと言うのに。

翻訳の広津さんが解説で書いていらっしゃいますが、どんなにセンセーショナルな作品であっても
書かれた年代の基準からは逃れられなかったということでしょうか。

相手に対する愛よりも自分の正義が大事、という時点で本当の愛とはいえないかも…
というか
本当の愛情を育めなかった、ということでしょうね。若い神父とのプラトニックラブもほの見えますし。
テンペストのほうも恋情極まるといいつつ、愛情よりも支配欲でひたすら追いかけていますので
結局のところ、物語的には好一対でありますが。

サスペンス的要素の濃厚さと追跡劇の面白さは大いにかいます。
しかし、倫理面がやはり微妙な感じかなあ。
ロザモンドが宗教とか信仰心に重きを置かないようなことを言いつつ、逃げ出す先は修道院で、
でも修道女にはなれないわ、とか、なんかこう芯がいまひとつぐらついてるように読めちゃうんですよ。
一方
テンペストの執着心の強烈さは本当にものすごくて、なんでこれで逃げ切れるのか…と。
対抗させるために神父さんを出して後押しして2対1にしてバランスとってるけど
結局逃げ切る手段というか、結果がね…。

このあたりが出版に至らなかった理由ではないかと思うのですが
じゃあどうしたらよかったのか?

ロザモンドをこれ以上強くするのは可能だったのか?
テンペストを改心させて、ストーリーの面白さは持続したのか?
などなど。

編集とオルコットの話し合いが上手くいったらあるいは…と思わないでもないですが
そもそもラストが全然変わるでしょうし。
本っ当に!いまさらでたられば、な話でしかないですねえ。

読者としては、この微妙さも含めて、
オルコットの知られざる面があらわれている未刊行の作品を読むのだ、というドキドキ感をオプションにして読むのが
結局のところ、いちばんいいのかも。

オルコットファンで、若草物語以外も読んだ!面白かった!もっと読みたい!
という
ややコアなファンの方におススメの作品でした。
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