やっと読めました!


【内容情報】(「BOOK」データベースより)
「8号(出版用紙を製造する巨大マシン)が止まるときは、この国の出版が倒れる時です」-2011年3月11日、宮城県石巻市の日本製紙石巻工場は津波に呑みこまれ、完全に機能停止した。製紙工場には「何があっても絶対に紙を供給し続ける」という出版社との約束がある。しかし状況は、従業員の誰もが「工場は死んだ」と口にするほど絶望的だった。にもかかわらず、工場長は半年での復興を宣言。その日から、従業員たちの闘いが始まった。食料を入手するのも容易ではなく、電気もガスも水道も復旧していない状態での作業は、困難を極めた。東京の本社営業部と石巻工場の間の意見の対立さえ生まれた。だが、従業員はみな、工場のため、石巻のため、そして、出版社と本を待つ読者のために力を尽くした。震災の絶望から、工場の復興までを徹底取材した傑作ノンフィクション。

著者は佐々涼子さん
出版社は早川書房です。

震災関係の本はフィクション、ノンフィクション含めて何冊か紹介しています。
カテゴリにまとめるべきか否か、迷っているところです。

ノンフィクションの本紹介のサイト「HONZ」でも何度か紹介され
読者もたくさんいらっしゃる本ですが
やはり、読むと紹介したくなってしまいました。
誰かにおすすめ、というよりも
自分の考えで記録して、残しておきたい気持ちが強いかも。

ひとによって感銘を受けるポイントは違うと思うのですが、
ワタシとしてはまず第一に、
この本の素晴らしいところは
震災の本であるとともに、紙について教えてくれる本でもあるということをあげたいと思います。

読んでから、本を読むときに紙にも意識が向くようになりました。
本って、知らず知らずのうちに手でも楽しんでいるもんなんですねえ。
先日、『考える人』の記事で誌面の版組についての記事を紹介しましたが
どれくらいの意識にのぼらない要素をトータルして
ワタシたちは本を味わっているんだろう…と
感慨深いです。
それくらい、本を持って読むのって気持ちいいと
しみじみと味わっている今日この頃。
本は紙をめくるのがいいんだ、というお話を聞いたことがあり
同感していたつもりでしたが
まだまだ無意識だったんだなー。
隠し味に気づいたような感じで、とても新鮮^^

本書の中にも紙の特徴が何か所かに分かれて書かれています。
これも楽しいし、日本のレベルの高さってやっぱすごいわ、なのですが
(コロコロコミックの紙のくだりなど、優しさと技術の融合を見て、感心するやらニコニコするやら)
すごいな!と思ったのは
プロの方は紙を見ただけで自分のところの紙かどうかわかるのだそうで。
何にも書いてないのにねえ。職人さんって、マジぱねぇ。。。


紙の話をしたので、この本ですが
いい紙を使っています。
きっと日本製紙の用紙でしょうw 
いやマジで。だって、その話を書いているのに紙は別の会社…とは考え難いですよ。
色がクリームがかっていて、それはまあ個人的な好みですが
柔らかさとかしなり具合とか、読んでいて気持ちよいのです。

そういえば映画や本の『舟を編む』でも紙にこだわっていましたねえ。
ヌメリ感、でしたっけ。
辞書はまた別の質を求めますものね。

閑話休題。本書に戻って。

この日本製紙の石巻工場、復活のお話なのですが
それ以前に、すでに地震のときから
いくつもの奇跡が起きています。
工場が火事にならずにすんだこと。
従業員1306名全員が無事だったこと。
「人事を尽くして天命を待つ」という言葉がありますが
奇跡が起きるときには、
人事の前にも後にも天の配剤としか思えないことが大小取り混ぜて起きているのだと
ノンフィクションを読んでいて感じることがあります。
その時は渦中で気づかないのですが
きっと、ワタシたちの日常にもそんな天の配剤が小さく潜んでいるのだろうな、とも。

とはいえ、いい事ばかりではなく
亡くなった人たち
救えなかった人たち
災害に乗じて逮捕されないのをいいことに犯罪を犯している人たち
のことなども合わせて書かれています。
そんなふうに玉石混合のできごとが同時に起きて
同じ重みで存在している。
佐々さんは
両方の出来事にたいして、それぞれ適切な距離感をとりながら書いていらっしゃいます。

よきことを力強く、けれど祀り上げないように
悪しきこともそのままに、だけれど貶めないように。
このバランスには苦心なさったのではないかなー

勝手に推測します。(憶測でないといいな…)
本書の中で
『ノンフィクションを書いていると、私が能動的に書いているというよりは、物語という目に見えない大きな力に捕えられて、書かされているのだと感じることがある』
との記述がありますが
これは、物語を
素直に通して書きだすことができる、不要な捻じ曲げ方をしない人だからできること。
佐々さんのしなやかで線のくっきりとした文章のおかげで
ワタシたち読者も、この出来事が書かれた本を
よい形で受けとめることができました。
感謝です。

(本全体の構造としてもちょっと追記。
地図を文章の前にもってきて
写真をあえて後ろに持ってくる
この構成は、ワタシにとって本当にありがたかったです。
正直、写真が先だったら、苦痛を感じて読み進められなかったかも…
写真というのはそれくらい迫力がありますからね。)

震災の記録であり
日本のプロフェッショナルの記録であり
亡くなった人たちにも手向けられているであろう作品です。
出版当初、話題になりましたが
一時的な人気ではなく、これからもずっと読み継がれていってほしい。
そう強く感じました。
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いとみち 三の糸

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